2019-12-06 Fri
3月19日に出版した合同句集『海へ』には、36名が20句ずつ寄せていますので、リレー形式で仲間の1句を紹介しています。
今回は森山栄子さんの句を松枝真理子が鑑賞しました。
初燕ターミナル駅動き出す 栄子
「ターミナル駅」が「動き出す」と表現しているが、もちろん駅が動くわけではない。
初燕が見られる時期は4月ごろであるから、入学、進級、就職また人事異動のシーズンと重なる。
駅を行き交う人々に変化が生じるのだ。
そのような状況を「動き出す」と表現したのが眼目である。
詠まれているのがローカル線の駅なら、読み手の想像する場面はある程度限られてくるだろう。
しかし都会のターミナル駅である。どんな光景かは一概には言えない。
読み手が各々にひきつけて味わえるところも、この句の魅力である。
また、初燕の生命力と躍動感あふれるイメージからは、
人々が新しい世界へ、そして未来へ歩み出すという印象を受ける。
前述した飛来の時期ともリンクして、季語が効果的に働いている。(松枝真理子)
次回は山﨑茉莉花さんの句を森山栄子さんが鑑賞します。
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