2019-10-25 Fri
3月19日に出版した合同句集『海へ』には、36名が20句ずつ寄せていますので、リレー形式で仲間の1句を紹介しています。
今回は乗松明美さんの句を布川礼美さんが鑑賞しました。
言ひ分に一理ありけり巣立鳥 明美
この句は、まだまだ、頼りないと思っていた我が子を一人の人として認めている場面をとらえた句だろう。
親子で話し合いをする中でも、ただ言い返すのではなく、もう一人の人間としての考えがあるのだと、子の言い分に、妙に納得してしまったのだろう。いよいよ子が一人立ちしようとする巣立ちの時、心配と期待を胸に送り出したい。
巣立鳥とはまさに、雛鳥が巣から飛び立って飛び去る様子と重ねて、一人前の大人になるまでの子を見守る母親の気持ちが子の成長と共に、一句に丁寧に込められていると思う。
口答へすれど雷恐がりて
吾子の注ぎくるるビールの美味かりし
芋の皮剥く子の帰り待ちながら
子に習ふ携帯パソコン秋の夜
子離れの記事に頷きソーダ水
夫と子に嫁の加はり雪見酒
他の句を読むと、現在は、子育て卒業を祝い、ほっとした気持ちで、いるのだろうか。
しかし、そこに達するまでの今までの様々な子育て生活の過程がたった他の句の中にも詠んで伺え、面白い。
親子共に、だんだんと変化する心境や、子供の成長の様子が、子を思う明美さんの視点から、日常を何気なく詠んだ俳句の中に、飾らずに巧く溶けこんでいる。(布川礼美)
次回は塙千晴さんの句を乗松明美さんが鑑賞します。
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