2017-10-21 Sat
早いもので、インターネット句会も今回で40回目です。今回の参加は16名、138句が集まりました。
井出野浩貴選
特選句
爽やかや海へと続く坂翔けて 味千代
秋蝶も去りがたきかな子規の庭 真理子
こほろぎや戸口に挟む回覧板 麗加
満月と差向ひたる観覧車 麗加
火恋しコルトレーンの息遣ひ 泉
入選句
宣誓の声の擦れて運動会 礼美
突き抜けるような青空のもとで行われた運動会。
選手宣誓が行われるのはプログラム最初の開会式。
競技がはじまる前で、生徒も先生も観客もまだ表情が硬い。
そんな中、代表の生徒はまさに晴れ舞台に立って宣誓をはじめるのだが、
過度の緊張で最初の一声が擦れてしまった。
声が擦れたというところにリアリティがあっていいと思った。(真理子)
新涼や触れ合うて鳴る牛乳瓶 麗加
上野にも粧ふ山のありにけり 味千代
犬連れて母を待ちをる良夜かな 麻美
木犀の真只中に佇みぬ 泉
文机の一輪挿しの鶏頭花 真理子
老いの手の記憶鮮やか豊の秋 ゆかり
雨音の重くなりたり颱風圏 麗加
白壁に椅子の影おき秋灯 泉
新米や天地をかへす釜の中 栄子
炊き上げたお米を杓文字でかえしている場面を想像しました。
それを「天地」と表現しているところが大らかですし、
また穀物を育てる自然の恵みまで感じることができます。
この新米を食べてみたいものです。(明日香)
大海の光もろとも秋刀魚焼く 志奈
やうやくに日の差して来し萩の庭 林檎
ゆるゆるとセスナ旋回秋の空 あき子
この列は何の行列秋うらら 泉
何に並んでいるのかわからないがやたら長い行列を見かけた。
そこに加わるつもりはもちろんなく、
結局何の行列なのかにもあまり興味がない様子が「秋うらら」というに託されている。
作者は一瞬だけそれを思ってすぐさま吟行にでも行ったのであろう。(林檎)
おかはりの子に新米のてんこ盛り 栄子
島の子のヒップホップに月を待つ 依子
塩・砂糖小瓶に分けて秋思かな 明日香
微かな音を立てながら、さらさら流れ落ちる塩・砂糖。
何気ない家事のひとこまにも秋に想いを馳せる繊細な感受性を感じました。(香奈子)
ピストルの音に泣き出し運動会 麗加
このような思い出を句に残せる作者の環境が本当に羨ましいです。
幼稚園時代って当時は泣きたくなるくらい大変でしたが、
ピストルに泣くなんて今だけです。
羨ましくて頂いた一句です。(紀子)
竿自慢ばかりしてをり鯊日和 志奈
「鯊」を釣るぐらいの気軽さゆえに、
釣りをしている人も本格的に釣りをというわけではなく、
趣味程度にまずはその格好をご機嫌に楽しんでいるという感じが、
竿自慢ばかりしているという表現でよくわかる。
季題がよくきいている。(依子)
港から港へ月に導かれ 依子
ややありて母の返事や十六夜 志奈
互選で人気の句もご紹介します。
円陣を離るる右手天高し 明日香
木犀や言葉にせねば消ゆるもの 泉
爽やかやエレベーターのすぐ来たる あき子
ライターのカチャリと開く虫の闇 栄子
赤ちゃんを連れし先生運動会 礼美
次回は12月5日締切です。
今年の納め句座となりますので、みなさんの参加をお待ちしています。
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