2017-08-29 Tue
インターネット句会の特選句について、今回は田村明日香さんが鑑賞を書いてくださいました。緑陰に雨の匂ひの残りをり 林檎
木陰を歩いている時にふっと雨の匂いを感じたのでしょうか。
「緑陰」という光と影が交錯する場所での、瑞々しい質感が伝わってきます。
まさに一瞬の感覚を捉えた句だと思います。
水馬正面衝突することも 真理子
水馬はある向きに直線状に進みますが、この水馬は「正面衝突」してしまったとのこと。
人間や自動車であれば一大事ですが、あれほど軽そうな水馬であれば少し微笑ましく思います。
それを見ている作者のゆとりまで伝わってくるようです。
潮の香の男乗り来る冷房車 林檎
私は江ノ電のような海沿いの列車を想像しました。
海から帰る男の人たちが電車に乗り込む姿はよく見る光景です。
その姿を視覚的な情報ではなく「潮の香の」と表現したことでリアリティーが増しています。
叱りてもこの手離さず大夕焼 香奈子
母親と子どもの景でしょうか。
例え叱ったとしてもいつも子どものことを見守っている母の愛情が感じられます。
「大夕焼」という大きな季語と取り合わせたことで、どの親子にも共通する普遍性を得たように思います。
夕涼み姉のやうなる先生と 栄子
「姉のやうなる先生」という思い切った比喩が面白いと思いました。
少し厳しいけれども自分のことを思ってくれるような人なのでしょうか。
「先生」に対する信頼が心温かく感じられた一句でした。
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