2016-12-20 Tue
12月のインターネット句会の結果です。参加者22名、196句の投句がありました。
井出野浩貴選
特選句
風吹いて飛び火のごとき紅葉かな 麗加
角一つ曲がり違へて暮早し 志奈
おろしやの匂ひをまとひ白鳥来 林檎
手袋を片方はづし投函す 良枝
おじや吹く三歳肩をいからせて 麗加
入選句
焼鳥や独身時代懐かしみ 味千代
届かざるものほど紅く通草の実 栄子
水鳥は光を集めては広げ 泉
間延びする発車ベル音冬ぬくし 千晴
落葉踏むとりとめもなき話して 真理子
黄落や大樹にベンチひとつづつ 泉
小春日や飛行機雲の伸びる伸びる 優美子
伸びる伸びるという字余りで間延びした感じがおもしろい。
下七が小春日と飛行機雲という上五中七の言葉にマッチしている。(中川玲子)
挙手のなき授業参観冬の蝶 ゆかり
私の記憶では、授業参観となるとみんな我先にと挙手していたので、
少し不思議に思った。
手を挙げられないほど緊張している様子が、
寒さに固まっている冬の蝶と重なってイメージされた。(優美子)
廃校の花壇寒禽鳴くばかり 真理子
預かりし赤子背負へば冬ぬくし ゆかり
銀杏散る金の手水を汲みにけり 良枝
給食のアルマイト鳴る冬日かな 志奈
小春日や発掘遺跡見学会 真理子
丸眼鏡マスクずらして挨拶し 泉
幾年のペンの古びよ冬籠り 紅歳
今年もまた寒さゆえの冬籠り。
日頃には、なかなか取り組めない書き物でもしようとペンを取り出す。
そこで、古びたペン先に気づくものの…寒さゆえに、
また新しいものを買い求めるのを先送りにしてしまう。
そうやって、幾年同じことを繰り返していることよ…という、
少し自分自身の無精を自嘲している感じが、古びよの「よ」に込められている。(依子)
それぞれの席に膝掛おかれあり 真理子
初雪や古墳は永き夢の途中 良枝
山眠る縁切寺をふところに 泉
遮断機の上がりつぱなし冬ぬくし 栄子
電車が来るのはせいぜい1時間に一本。
あとはずっと上がりっぱなしの遮断機は、なんとなく間抜けでのんびりした暖かな冬の日の空気が伝わってくる。
たまたま自分が渡ろうとしたら遮断機が降りはじめたりして、などと想像するのもまた楽しい。(千晴)
休暇とり日向ぼこして過ごしけり 千晴
しやがみこみばつた追ふ子の背にばつた 赤江玲子
訥々と語る母国語雪もよひ 栄子
つぎは何言ひ出すのやら着ぶくれて 泉
おいしいと言ひくれる人冬ぬくし 真理子
公園に昨日のわたし木の実落つ 百恵
寒オリオンあれがベルトと教へけり 栄子
手に取れば存外いびつ銀杏落葉 真理子
瞑りても銀杏黄葉の明るきよ 泉
観覧車回りそめたる冬霞 林檎
初雪や灯されて街なつかしく 良枝
初雪の夜の懐かしい感じに共感しました。
その風景や場所ではなくて、雪ってきれいだな、ワクワクするな、
と思った子供時代の心に戻るんでしょうね。(味千代)
風邪の床二段ベッドのまた軋み 林檎
風邪で休んで日中一人で寝ているのか、
あるいはもう一人寝ている人はぐっすりと寝入って動かず、
自分一人しきりに寝返りを打ってしまうのか。
二段ベッドの軋みによって、その静けさとともに、
音を立てるのは自分一人という孤独を描いているのが巧み。(百恵)
雪片の思ひ思ひに風とらへ 良枝
もう酒のにほひのほのか納め句座 利行
落葉踏む誰か後ろにゐるやうな 泉
落葉を踏む行為には何か淋しさが伴う。
ふと後ろに人の気配を感じたのは、作者の心の影がそうさせたのかもしれない。
淋しさのに中にもぬくもりが感じられる句である。(良枝)
互選で人気のあった句をご紹介します。
包装の手付き鮮やかクリスマス ゆかり
冬帽子一つ一つを叱られて 佳世子
この句会は、今年の納め句座です。
来年もよろしくお願いいたします。
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