2016-06-29 Wed
今回の特選句には、大友紅歳さんが鑑賞を書いてくださいました。帯留めを仕舞ふ引出し桐の花 紀子
高級感のある桐のタンスの引出しに帯留めを仕舞った時、いくつかの帯留めが
織りなす姿を桐の花のように感じたのでしょう。
男性には経験のない別世界の句ですが、女性らしい感性とエレガントさに
満ちた一句。
病棟のみな夏服となりにけり 利行
四季のある日本では衣更えは必然であります。制服のある学校や職場などでも、
この時期一斉に夏服に変わります。近年、クールビズもすっかり定着してきました。
四季の変化が表れにくい病棟という場所での服装の変化を、タイムリーにかつ簡潔に
読んでいる。
日傘閉ぢ応援席に加はりぬ 泉
何の応援席かは分かりませんが、日が照りつける屋外。女性は日傘を差したいのに、
周りの雰囲気がそれを許さないのか、後ろの方を気にしたのか?
あるいは応援に力が入ったのか。
本気モードに団結した応援席の歓声が聞こえるようだ。
青梅の首差し出して落ちにけり 利行
需要が増すこの時期、青梅の最盛期です。
鈴なりになった梅の実が落ちるとき、首を差し出すかのような実感があります。
時代劇の切腹後の介錯を連想させるなど、一瞬の描写がはっとさせる新しさを
提供している一句。
ラムネ干すポケットに手を突つ込んで 麗加
ラムネを飲んでいるのは若者なのか、子供なのかは不明ですが、手を使わずに
ラムネを飲み干すのは、立派な芸なのかも知れません。
ポケットに手を突つ込んでという表現が得意げな飲み手を強調しています。
日常の非日常的な行為を句に仕上げた作者の鋭さが光る。
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