2016-04-29 Fri
特選句の鑑賞は、小澤佳世子さんが書いてくださいました。朝桜舗道にあをき影落とし 良枝
舗道は一年を通して同じ色だと思うのだが、夏は濃く冬は薄い色に感じる。
まだ舗道が熱を持たず朝のひんやりとした様子が感じとれる。
桜を通した光が影をあおくしていて、作者の影もあおい。
自らも桜と同じように光が透けているのではないだろうかという気にもなる。
長電話春満月を眺めつつ 栄子
長電話から次第に心は月へと移り、うわの空で聞いている。
春満月を見るように相手にすすめただろうか、いや月のことすら話題になっていない様子だ。
春満月を眺めるために長電話を楽しんでいるようにも思える一方で、今日の月を見てもあなたは何も思わないだろうという相手へのあきらめも見えてくるようだ。
入園の近しミシンの音軽し 赤江玲子
入園に向けて手提げ袋やお弁当袋を作っているのでしょう。
子供の好きなキャラクターの生地で子供の喜ぶ顔も見えてくる。
親子で入園を心待ちにしている様子がミシンの軽快な音と共に伝わってくる。
うららかや宇和島城に伊達の君 味千代
築城した藤堂高虎が今治に移ったのち、伊達政宗の長子秀宗が入城したとのこと。
伊達の君はもしかしたら伊達家の子孫かもしれない。
お城に似合う粋な男性なのだろうか。彼のためにあるようなお城なのだろうか。
作者が呼ぶ伊達の君がどのような君なのか気になってきた。
一切をくるみし卒業ガウンかな 麻美
卒業ガウンから大学の卒業のことである。
大学は勉強以外に部活やバイト、遊び、趣味など、のめりこむままに自由に時間を費やすことができる。
そののめり込み方によっては留年に至ることもあるだろう。
また、卒業と同時に卒業という覚悟のものもあるだろう。大学時代に得たものにより一回りも二回りも大きく成長しての卒業だ。
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