2016-02-11 Thu
小澤佳世子さんの句集『葱坊主』を読む企画。森山栄子さんが鑑賞を書いてくださいました。
しやぼん玉一つ一つが選ぶ風 佳世子
自問自答くりかへしては椎匂ふ 〃
春の昼指揮者空気を抱くごとく 〃
蟬時雨十二神将笑ひ出す 〃
十薬を生けてコップの透き通る 〃
顔洗ふごとく紫陽花嗅ぎにけり 〃
愚痴一つ誰にも言へぬ虫の夜 〃
夫が子を笑はせてゐる秋刀魚焼く 〃
暖房車あと一駅に眠くなり 〃
しやぼん玉一つ追ふ間に皆消えて 〃
句集を読んでいて、身辺りまで何かが満ちてくるような感覚をしばしば感じました。
それは、虫の声や椎の匂い、それぞれの季節の持つ空気のようなものであったりするのですが、中でも好きなのは、次の一句です。
十薬を生けてコップの透き通る 佳世子
日常の中の瑞々しい瞬間が自然に詠まれ、くきやかに事象を捉えた句だと思います。
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