2016-01-31 Sun
小澤佳世子さんの句集『葱坊主』を読んでいく第2回目は、小山良枝さんが書いてくださいました。
<選句>
西瓜の種蹠にくつつけ眠りをり 佳世子
胎の子の眠れば眠く冬うらら 〃
夫が子を笑はせてゐる秋刀魚焼く 〃
化粧せず出てきし春の寒さかな 〃
春の月我を褒めるは我ばかり 〃
どんぐりを渡せばぽいと捨つる子よ 〃
夏帽子知らない人にもこんにちは 〃
夏落葉めくつてだんご虫探し 〃
風邪の子に挟まれ眠る六畳間 〃
ぶらんこを押し夕ご飯何にしよう 〃
<鑑賞>
春の月我を褒めるは我ばかり 佳世子
句集「葱坊主」は、独身時代から結婚、出産、子育てと、小澤佳世子さんの半生が詰まっているアルバムのようだと感じた。読みながら、自分自身のその折々の幸福感や不安感が鮮やかに蘇ってきて、思いもよらず涙が溢れそうになった。鋭い感覚を感じさせる秀句が沢山あり、十句に絞るのは難しかったが、今回は子育ての句に焦点を当てて選ばせて頂いた。
掲句<春の月我を褒めるは我ばかり>は、誰しもが抱く普遍的な思いであろう。子育て中は、母親が子供と向き合う場合が多く、ともすると世の中から取り残されたような孤独感を味わうことがある。産後間もない頃は尚のこと感傷的になったりもする。母親が子供を育てるのは当たり前と言えば当たり前なのだが、時には「貴女は本当に良くやっている。」、と誰かに褒めてもらいたいものである。
しかし、<夫が子を笑はせてゐる秋刀魚焼く>、<ぶらんこを押し夕ご飯何にしよう>などからも分かるように、家族がいて、子供が成長してゆく喜びがあってこそ、自分もいきいきと生活することができるのだ。
掲句は、そんな、日々のささやかな思いの発露なのである。
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