2015-09-25 Fri
今回は森山栄子さんが書いてくださいました。サーベルの音は空耳夏館 百恵
暑さをくぐり抜けて入った夏館。市街とは対照的な静けさ、
涼やかな空間を進むにつれ心は落ち着きを取り戻す事だろう。
そんな折、ふと捉えた響きをサーベルの音ではないかと感じた感覚の鋭敏さ。
生命力の高まりを感じる八月は、人間の命や平和に対する考えをも深めさせる。
マニキュアの剥がれかけたる晩夏かな 志奈
夏の日差しにアスファルトは炙られ、看板のペンキは張りつくようだ。
そんな中、気がつけばマニキュアが剥がれかけている。
もう晩夏であるのだと気づく。何気ない日常のなかにある
季節の移ろいを確かに捉えている句。
青空へ投げてみたくてレモン買ふ 良枝
この句を目で辿ってすぐに映像が浮かんだ。
青空とレモンのコントラストが鮮やかに眼前に浮かぶのだ。
平易な言葉の選択が、想像への反射神経を高めてくれていると感じた。
音楽会果ててひときは霧深し 浩貴
音楽は思考レベルではなく情緒レベルに働きかけるというが、
音楽により聴衆の心は揺さぶられ、
会が終わってもなお心中は余韻に包まれる。
そしてホールを出てからの霧。
霧もまた情感をもって非日常性を連続させる。
この帰路はどこに続いているのか、、などと
読み返すほどに想像が広がる句。
別々の車窓見る子よ鰯雲 ゆかり
夏休みの子供。
列車に乗ってしばらくははしゃぎ、絡み合うようにしていたことだろう。
しかし、ひと時を経て子供たちは別々の車窓を見つめている。
作者はその光景を捉え、いずれ別々の道を行くであろう
子供たちへの思いを季語に言寄せた。
子供たちと過ごす今を大切にしていることが伝わってくる句。
スポンサーサイト