2015-06-16 Tue
今回は、鏡味味千代さんが特選句について書いてくださいました。開演を待つ若葉風浴びながら 浩貴
お芝居なのか、薪能なのか。
若葉風という季語から、野外の公演であることが伺えると同時に、
開演を今か今かと楽しみに待つ気持ちが手に取るようにわかり、
ついこちらまでワクワクしてしまう。
真夜中に止まりし時計朧月 栄子
ある夜にふと目が覚めた。時間を見てみると、目を疑う。
寝た時間からそう経ってはいないのだ。
ああ、時計が止まってしまったのかと理解するのに数十秒かかる。
それだけの句なのだが、朧月という季語を用いることで、
まるで時計と一緒に自分の時まで止まってしまったかのような、そんな曖昧な時の流れを感じさせる。
新緑にいただきますと聞こえきて 礼美
いただきますと言っているのは誰だろう?
新緑という季語から、これは子供ではないかと推測する。
特別ではないが、なんだかいつもより少し清々しい朝に、気持ちを新たにさせられる句。
レモン水一人旅企ててゐる 麻由美
久しぶりの一人旅? 企てているという言葉が秘密めいていて、
作者の楽しそうな気持ちが伝わる。飲んでいるのがレモン水。
何か前向きな挑戦を思わせる。もしくは南の方への旅か?
想像する読み手も企てに参加している気持ちになる。
しゃぼん玉心はいつも置き去りに 泉
ふわふわ浮かび、ぱちんと割れるしゃぼん玉。
自分が吹いているはずなのに、心はここにあらず。
もしくはしゃぼん玉に乗ってはじけてしまったのか。
しゃぼん玉の持つ心許なさが作者の心を表している。
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