2013-07-24 Wed
インターネット句会の結果をお知らせします。今回は参加22名、投句は193句でした。
西村和子選
特選句
草笛は先生よりも皆上手 紀子
蓮の花たとへば少女の透ける頬 きあら
歩く子の影のほとんど夏帽子 あき子
身の内にタンゴのリズム夏の雨 泉
木に登れ大穴を掘れなつやすみ 麻由美
せっかくの長い夏休みなんだから子供には、何でもいいから「こんなことをやったぞ!」と胸を張れるような体験をしてほしいと大人は願っている。
まあ、たいていはそうはいかないのだけど…。(麻美)
入選句
大滝を上から下から真裏から 麻美
簡単な夕餉ビールをなみなみと みわ子
腕枕そっとはづして明易し あき子
ふるさとに子を産みに行く夏の空 桂子
滝壺の渦巻く方へ船進む 麻美
草いきれホームベースの跡残る 礼美
訊ねたき素振りも見せず麦茶注ぐ 銀子
梔子の香にもたれかかられてをり 林檎
自転車の向きバラバラに青田風 礼美
梅雨深し器具庫の小さき窓明かり ゆかり
ざあざあと雨が降っている。雨音に慣れてしまうと、意識しないと聴こえてこない。
集中していた作業からふと目を上げると、小さな窓明かりが目に入った。
そして本降りの雨も続いていた。これから物語が始まるような、あるいは終わりに近づくような、そんな一場面が目に浮かんだ。(馨子)
建売の既に完成梅雨晴間 真理子
勝ち名乗りあげたる右腕草いきれ 紅歳
名画座の扉はひとつ梅雨寒し 銀子
半夏生しばらく会はぬ間に二十歳 銀子
幼いころから知っている方、もしくは親戚のお子さんでしょうか。
久しぶりに再会し、その成長ぶりに驚くとともに、
時の流れのはやさを実感する作者の思いが伝わる句です。(奈都子)
螢待つ無伴奏チエロ聴きながら 泉
七夕や大人の願ひ後ろ向き 真理子
ナイトゲーム父の財布の紐ゆるし 紀子
どくだみの花の白さよ嘘はなき みわ子
光琳の筆より冴ゆる燕子花 きあら
滝の水重なるままに落ちにけり 麻美
螢火に吾の吐息をあはせたる 泉
ジャズの夜の更け雷神も打って出し 依子
天瓜粉うちて忘るる愁ひかな きあら
膝抱いてみるほうたるのあらはれさう 泉
胡瓜揉む二度目のお産恐れつつ 桂子
夏蝶や自由気ままな時僅か 礼美
この世を謳歌するようにゆうゆうと飛ぶ夏蝶。けれど、それは夏蝶にとってほんの僅かな時だろう。
人も自分のことだけ考えて、自由気ままにふるまえるのは青春のほんの一時期だけかも。
夏蝶のように。(みわ子)
夏雲や翼が欲しと口ずさみ 林檎
夏萩やなにを商ふ店ならむ 銀子
夏野行く極彩色の女たち 味千代
ハンカチをそつとあてがふおしゃまかな 麻由美
風に乗る夏蝶に追ひ越されけり あき子
調弦の僅かに合はず梅雨曇 真理子
梅雨曇と調弦が僅かに合わないことがとてもマッチしていると思いました。
何度も何度も一つの音が聞こえてきそうです。(あき子)
月涼し無事退院のメール来て 林檎
さくらんぼ姉となる子を甘えさす 桂子
下の子が生まれたら、今まで通りにかまってやることはできなくなるでしょう。
我慢させたり、後回しになったり……。
それがわかっているから、生まれるまでのあと少し、甘えさせてやりたい母の愛情あふれる句です。(明美)
以下は互選で人気のあった句です。
香水に馴染めぬままに別れけり みわ子
見せ合うて赤べろ黄べろかき氷 麻由美
身内には厳しく女医の裸足かな 礼美
ほどのよきしだらなさなり凌霄花 銀子
雲湧けばたちまち匂ふ百日紅 紅歳
次回は9月ですので、よろしくお願いいたします。
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