2012-09-22 Sat
インターネット句会の結果をお知らせします。参加者は27名、句数は246句です。
今回は記念すべき第10回です。
これを節目にまた頑張っていきたいですね。
西村和子選
特選句
鳳仙花泣き虫おませいぢめつ子 麻由美
正論に正論かざし日焼の子 泉
男泣きして黄金の夏は果つ きあら
涼新たさうつぶやいてみたくなる 千晴
今年の夏も暑さが厳しく疲れる夏でした。特に残暑は厳しく長く感じます。作者の言うように涼新たとつぶやいてみれば、少し爽やかな気持ちになります。(みわ子)
重力をくはへて午后の草熱れ きあら
入選句
遊び船どれも船尾の薄暗き 利行
夫がいて退屈な午後小鳥来る 久美子
くちびるの青くなるまでプールの子 晃義
唐黍の葉のばりばりと剥ぎ取られ 美星
高層ビル雲突く二百十日かな 麻由美
猫じやらし持たせて押しぬベビーカー ゆかり
新涼や広場に中国雑伎団 真理子
鰯雲仰ぐ母から顔背け 久美子
正面に銀やんま航路を譲る 紀子
普通といふハンデもありて蛍草 麻由美
放物線重ね航空路図涼し 泉
水色の鉛筆減らし夏終る 麻美
夏は海、プール、青空の下など水色のものがたくさん。外で元気に遊んで、日焼けした子が思い浮かびます。楽しい思い出のつまった夏になったことでしょう。(美星)
秋雨や墨の匂ひの蘇り 林檎
初秋の文学館に人ぽつぽつ みわ子
金木犀おもひでは美化されてゆき 麻由美
やや強いその香りと思い出が美化されているのが共感できる。私は幼少期に見た我が家の金木犀と祖母のいた裏庭の畑の風景はいつまでも忘れないでいる…が、当時は特に好きでもなく、なんとも思わなかった。でも、いざなくなるというとその思いは強くなる。(礼美)
「はい・いいえ・どちらでもない」秋思かな ゆかり
つくつくほうし応援団の拍手めく 真理子
みどりこの上げし一声涼新た 栄子
ベランダのスケッチ大会避暑の宿 麻美
子を追つて我が洗ひ髪滴らせ 美星
蝉時雨遠くで一つみんみんと 礼美
子の背に黒子九つ雲の峰 林檎
久し振りに子どもの背中を見て黒子を発見。海とかバーベキューでお肉を焼いている時、などを想像しました。成長して、大きくなった息子の背中に感慨深い思いが、じっくり見る、黒子を数える、という行為につながったのではないでしょうか。(佳世子)
湾上に眺むる夜景秋涼し 明美
風鈴の短冊替えて音硬し 桂子
朝顔の種折紙に包みけり 茉莉花
この窓に場違ひは吾か鶏頭か 久美子
甚平着てフランス人の坊やかな 真理子
海鳴りは呻きにも似て原爆忌 紀子
水しぶきやがて背泳ぎ現るる 宏二
乳児から幼児に葉月十五日 佳世子
薬飲む水生ぬるき敗戦忌 利行
黒葡萄吸ふやいよいよ変声期 林檎
「吸ふ」という表現が、「黒葡萄」と「変声期」という言葉を、しっかりとしかしその危うさも感じさせながら結びつけているように思います。いよいよ思春期をむかえる期待や不安、渦巻くいろいろな気持ちをこの一句から感じました。(馨子)
桔梗のつぼみ潰せば罪の音 ゆかり
夏休星の図鑑を買ひ足して 泉
血液型性格判断避暑の宿 茉莉花
遅延告ぐ車内放送秋暑し 真理子
背伸びしてポストに届く白木槿 利行
客席へ役者歩めば涼新た みわ子
風死すや五叉路信号全部赤 泉
用も無く電話かけたり震災忌 茉莉花
落ち着かないのだろう
もしかしたら命の残り火を切らしてしまうのではという恐れ
用事がなくてもかけた電話の向こうに
大切な人の声があり存在がある
不安定な世界を電話の声を聴きこらそうとする祈り
崩れたガレキの歴史の上に今がある忘れてはならないと思う(紅歳)
雨降って止んで陽が出て稲育つ 晃義
秋の海灯を消してこそ見ゆるもの 麻由美
号砲やプールの雲を崩したり 宏二
ハンモック庭に残して寮無人 麻美
裸の子オリンピックに声上げぬ 桂子
可愛らしまだ色づかぬ鬼灯も 真理子
宿題を漸く終へて月丸し 真理
互選で人気のあった句もご紹介します。
大花火静かに海へこぼれをり 美星
羅針盤振り切つて十五才夏 泉
徹夜なる冒険もして夏休 銀子
海と空離れてゆきぬ涼新た 馨子
三日月のひつそり牙を剥いている あき子
平和って何と問われし夏休み 栄子
この道の片陰ずつと山内家 紀子
盆踊りタイムマシンの輪の中に 麻由美
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