2017-07-30 Sun
松枝真理子句集『薔薇の芽』について、津野利行さんが10句選び、その中の1句に鑑賞を書いてくださいました。どうもありがとうございました。
松枝真理子さん、句集「薔薇の芽」をありがとうございました。
下記に特に好きな句を10句を挙げさせていただきます。
ドアマンの帽子に肩に落花かな 真理子
父と子の夜のひととき夏の星 〃
細心にかつ大胆に西瓜切る 〃
梯子降りまた眺めては松手入 〃
香水瓶飾るや夫の知らぬ恋 〃
バルコンに出て女王の気分なる 〃
父からと一言添へて新茶汲む 〃
髪洗ふ生真面目にしか生きられず 〃
さんま焼く家庭円満何が不満 〃
どの辺に開く一発目の花火 真理子
私が人生初めて入った句会、出た句会が「パラソル句会」。本当に何もわからず、何も知らずの状況から約6年間お世話になりましたが、その世話役をしていたのが真理子さん。何となくではあるがそれでも6年間接点があればうっすらと人となりが見えてくるものであるが、句集を詠ませてもらって想像通りであり、かつふ~んと思わせてくれるような一面も見させてもらっておもしろかったです。
お子さんを詠まれた句がそれも素晴らしいですが、あえて10句からはずし、なるべくそこから離れた真理子さんにクローズアップさせてもらった。この句花火を待っている時を詠んだ句ですが、臨場感ありますよね。広い空間全体が見えてくる。「一発目」という言い方の思い切りの良さ、句またがりのリズム感の良さ、真理子さんの思い切りの良さが存分に表されているように思いました。その思いきりの良さが持っているものなのか、あるいは憧れから来ているものなのか、それはご本人にしかわからないところではありますが。
津野利行
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2017-07-09 Sun
松枝真理子句集『薔薇の芽』について、永岡ひよりさんが10句選んでくださいました。どうもありがとうございました。
マフラーを無理矢理巻いて送り出し 真理子
子どもには見えてをりけり蟻の道 〃
春を待つ我が進む道見えてきて 〃
春宵や会ひたき人は会へぬ人 〃
みんみんのみに濁点のついてをり 〃
香水瓶飾るや夫の知らぬ恋 〃
頑張らぬことが秘訣よ草だんご 〃
落葉踏む物足りなくて蹴つてみる 〃
退屈なやつ霜柱踏まぬとは 〃
踏青や手をつなぐことなくなりて 〃
子どもが幼い頃は、手をつないで歩き、走り、たまに手を引かれて「ママ!早く来て!」と言われていたかもしれない。
いろいろな命が煌めく野原などで一緒に遊んだ日々は遠く、子が成長した今、手をつなぐことすらなくなってしまった。
寂しい気持ちが無い訳では無いと思うが、素敵な想い出として息づき、成長した子を応援している気持ちが垣間見えるようだ。
寂しげでもあり、でも爽やかな晴れ晴れとした気持ちが混ざっている、これからは〇〇ちゃんのママではなく、名前で呼ばれる人生があるだろう。
2017-05-25 Thu
松枝真理子句集『薔薇の芽』について、志磨泉さんが10句選んでくださいました。インターホン画面すれすれ夏帽子 真理子
マフラーを無理矢理巻いて送り出し 〃
キャンプより帰りてもまだ歌ひをり 〃
みんみんのみに濁点のついてをり 〃
その番組見せる見せない秋の宵 〃
肯定も否定もせぬ子五月闇 〃
コスモスや病さらりと告げられて 〃
落葉踏む今ならわかりあへること 〃
おでん酒年を取るのも悪くなし 〃
忘れ物あへて届けず秋うらら 〃
誰しも経験したことのある場面ではないだろうか。同世代である私にひきつけてみると、子供の忘れ物が思い浮かぶ。「いってらっしゃい」と送り出し、やれやれと一段落。ところが、食卓あるいは玄関に忘れ物が・・。忘れ物をして泣きべそをかくような年齢ではなく、中学生位ではないだろうか。一見、子供を突き放した行動にみえるがそうではない、季語が「秋うらら」だからだ。深刻な影響をもたらす忘れ物でないこともわかる。少々困ることによって本人の自覚を促したいという親心だ。そして、学校や友達に慣れてきた秋という時期だからこそ、子供自身で何とかできるであろうと親も思える。子供の失敗に一喜一憂しない子育てのその姿勢に、読者の私も爽やかな風を感じた。
ありがとうございました。
2017-05-05 Fri
松枝真理子句集『薔薇の芽』について、中川玲子さんが10句選んでくださいました。不惑とはなんと自由か梅ふふむ 真理子
不惑となり、子育て等も落ち着いて自由の身になった解放感が表れている。
また、「梅ふふむ」という表現で、これからもう一段飛躍するぞという決意のような気持ちが伝わってきた。
真夜中の世界を知れり熱帯魚 真理子
夜桜を仰ぎ客待ち運転手 〃
つくしんぼ袴を取ればやせつぽち 〃
これ以上赤くはなれず烏瓜 〃
物知らぬ字を知らぬ我春暑し 〃
お揃ひのタオルぶんぶん運動会 〃
クリスマス寝ないと言ひし子の寝息 〃
セーラー服白線眩し更衣 〃
凍星や悔し泣きの子誉めてやる 〃
どうもありがとうございました。
2017-03-27 Mon
『薔薇の芽』 ふらんす堂著:松枝真理子 序文:西村和子 帯文:行方克巳
パラソル句会で幹事をしている松枝真理子の第一句集です。

吉田林檎さんが10句選んでくださいました。
どうもありがとうございました。
おでん酒年を取るのも悪くなし 真理子
こんな心境が理解できたのはつい最近のことである。
味の沁み込んだおでんをつつきながら、気楽に酌み交わすのは旧友だ。
「年をとったね」などと話しつつ、共通の思い出に笑いあう。
知り合った頃は自分がこんなことを語るなんて思ってもみなかった。
そんな友がいる喜び、「年を取る」ことを受け入れて楽になった心境を平明な表現で詠んだ句。
真理子さんの句でありながら、自分の句のような思い入れがある。
昼寝の子少し大きく見えにけり 真理子
少しずつ顔見知り増え初句会 〃
インターホン画面すれすれ夏帽子 〃
夏の川越して休暇の始まりぬ 〃
春立つや我らの句会船出して 〃
みんみんのみに濁点のついてをり 〃
忘れ物あへて届けず秋うらら 〃
春日さす修復されし壁画にも 〃
籐椅子に魂までも預けたる 〃